地方カメラマンのなんでもあり~の日記です。


by st-nature

デジタルカメラで建築写真を撮るメリット

下の写真は先日アップした萬翠荘のふもとにある「坂の上の雲ミュージアム」です。この建物は司馬遼太郎の小説 『坂の上の雲』 を軸としたまちづくりの中心を担う施設で、松山市全体を、松山城を中心としたセンターゾーンと、道後温泉など6つのサブセンターゾーン、個別資源としてのサテライトを設定し、同市全体を「屋根のない博物館」に見立てる構想です。(一部Wikipediaより引用) 道路特定財源で建てられ、ワイドショーなどでは非難的な見方をされた建築物でもあります・・・。
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EOS 5D MarkⅡ SIGMA 12-24mm F4.5-5.6 EX DG ASPHERICAL /HSM 12mm F11 1/60秒 ISO200 AWB RAW DPPで現像しPHOTOSHOP CS3にて色調・コントラスト・歪みを調整

 アオリ
この建物は安藤忠雄氏設計の鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造で、上から見ると三角形をずらして重ねたような形をしています。ファサードに垂直のラインはなく、建物の歪みを4×5カメラのアオリのように補正する場合は周囲の建物を基準にしなければなりません。この写真は目線の高さから撮影しており、4×5で言えばアオリは相当な量です。超広角の12mmで撮影していますので、仮に4×5で撮影できたとしても空の上部分にはくっきりとしたケラレができているはずです。

4×5のアオリは見上げる(ライズ)と画面の上部分のトーンが落ち、見下ろす(フォール)と下部分のトーンが落ちます。建物外観の場合は空のトーンが落ちて有効な場合が多いのですが、引きがなく超広角レンズを使用した場合にはクッキリとしたケラレが生じたり、そこまでいかなくても建物の上三分の一程度が青黒ーくなってしまうことがあります。

また、室内写真ではどちらか片方のトーンが落ちると本来のイメージとは異なった写りになってしまうことがあります。例えば天窓のある吹き抜けを見上げて撮影するような場合、天窓より降り注ぐ光により明るいイメージで撮りたいのですが、4×5でライズを使うと上部分が暗く落ちてしまいます。また、広いリビングなどを見下ろして撮影すると床部分のトーンが落ちてしまいます。画面の「周辺光量落ち」は実は個人的には大好きで、画像処理で意図的に落とすこともよくあります。どことなく味があり、レトロっぽい雰囲気が出るので好きなのですが、こと建築物の室内写真では周辺光量落ちは「いただけない物」だと私は思います。

このように4×5での撮影は実際のイメージとは異なった写り方をする場合がありますが、デジタルではそのような心配はなく、イメージどおりに撮影することができます。ただし欠点もあります。実は上の写真は横位置で撮影しているのですが、歪み補正によって左右がトリミングされ、縦の構図になってしまいました。通常はここまで切れることはありませんが、この例のように大きな建物でなおかつ引きがなく、超広角レンズで撮影しなければならない場合はこのようになってしまいます。ですので、撮影時にはトリミングされること常にを想定しておかなければなりません。(上の作例は左手前に看板があり、それを避けるために相当建物に近づいて撮影しています。超広角レンズを使用し、通常ではあり得ないほどのアオリ補正量ですので、このようになっていますが、通常は横位置の写真が縦になることはありません。)

 ミックス光源
ミックス光に強いのはデジタルカメラの最大の利点です。ネガフィルムでは一部プロ用フィルムの中にミックス光に強いものがありましたが、ポジ(リバーサル)フィルムではそうはいかず、フィルター補正を駆使して撮影しなければなりませんでした。野外撮影でもノーフィルターで撮れるのは晴天順光のみで、逆光や曇天でもフィルターは必需品でした。(建築写真の場合)

また室内においては様々な光源に合わせてフィルター補正しなければならず、同じ室内に種類の違う光源がある場合はその光源ごとにフィルターを入れかえ、多重露光をかけるなどの複雑で高度な技術が必要とされました。特に日中に撮影するときは外光が入ってきますので、補正は更に複雑になります。ですので、フィルム(ポジ)時代は室内撮影は夕方~夜間に撮影することが多くありました。

これがデジタルになって(特に最近のカメラは)何も考えなくても綺麗に写るようになってきました。デジタル初期の頃に多用したマニュアルホワイトバランスも最近ではオートホワイトバランスがメインです。ただし建築写真の場合は必ずRAWモードで撮影します。それは光源の色味や色温度を画質の劣化なしで調節できるからです。上に書きました複雑で高度なフィルター補正がパソコン上でできるのです。しかも撮影は多重露光なしの一発撮りです。

ただ、かつてプリント納品が多かった建築撮影ではネガフィルムで撮影することが多く、その撮影はノーフィルターの一発撮り、色味の調節もラボ任せでしたので、それから思えば少々手間が増えたことになります。しかしラボ任せよりも自分で調整する方が納得のいく色が出せるので断然いいですね。

 ラチチュード
ラチチュードとは1枚の写真で再現できる明暗の階調範囲のことをいいますが、現在のデジタル一眼のラチチュードはポジフィルムと比較するとハイライト側ではほぼ同等、シャドー側ではやや広いようです。それでもネガフィルムとの比較ではまだ狭いのですが、そこは合成でカバーすることができます。例えば、室内から窓を入れて撮影した場合に通常なら窓の外は明るすぎて階調は飛んでしまいますが、デジタルなら窓の外に露出を合わせた画像と合成することで両方の階調を出すことができます。(窓の外を完全に適正露出にすると不自然に見えるので、若干明るめにします)合成というとインチキのようにも聞こえますが、人間の目はよくできていて、室内から窓の外を見ても階調が飛ぶことなくちゃんと見えているのです。私は人間の目で見た感じに近づける合成はインチキではなく、大変有効な手段だと考えています。

 撮影スピード
撮影スピードの速さもデジタル撮影の大きな利点です。つい先日も地元施設の竣工写真を撮影しましたが、朝9時にスタートして外観・内観を80カットあまり撮影し、お昼過ぎには一段落していました。あとは日の廻りを考慮して午後遅めに数カットを残したのみです。このカット数をフィルム(ポジ)で撮影していたらどれだけ時間がかかったことか・・・。ただ、デジタルは後処理(歪みや色味・色温度・コントラスト調整etc)に相当な時間を要するので、トータルで考えればフィルムのほうが仕事離れは速いかもしれません。しかし撮影の間中待たされるクライアント様や施主様の立場になれば撮影は速いに越したことはありません。

 撮影コスト
デジタルカメラはフィルム代、現像代、ポラなどの感材費がかからないので、撮影費を安く抑えることができます。しかしいくらでも安くできるというわけではありません。なぜならデジカメは銀塩カメラらと比較して機材の更新を頻繁に行わなければならないからです。銀塩時代はカメラもレンズも一度買うと相当長い期間使うことができ、ハッセルなどではオーバーホールしながら一生使うこともあったようです。また、銀塩では描写を直接左右するのはレンズだけですが、デジカメはレンズ、ボディ双方の組み合わせで画質に影響してきます。ですので、機材の更新も両方が必要になります。(技術の進歩も早いし) 撮影費を安く押さえようとすると機材の更新ができなくなり、写りもそれなり、、、ということになってしまうのです。

 まとめ
このようにデジタル撮影では多くのメリットがありますが、実はカメラマンは撮影後に膨大な量の画像処理が待っているのです。知らない方も多くいらっしゃると思いますが、カメラマンがパソコンに向かっている時間は撮影時間よりも長い場合が多いのです。カメラマンの多くが睡眠時間を削り、眠たい目をこすりながら画像処理をしていますので、どうかクライアントの皆さん、撮影料を値切らないでください。よろしくお願いします。(^_^; 長文にお付き合いいただきありがとうございました。
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by st-nature | 2009-02-03 12:04 | 写真